1450年、応仁の乱の東軍総帥でもある細川勝元に建立され、現代一躍有名になった枯山水の石庭。
一度も見たことがないという人はほんのわずかではないでしょうか。
しかし、国史跡、特別名勝、そして世界文化遺産であるにも係わらず、その作者は未だ不明です。
そんな神秘に包まれた龍安寺の旅行ガイドです。
静寂への入り口
山陰本線以北に並ぶ寺院群を抜けたら現れる、石標に刻まれた大雪山龍安寺の文字。
門をくぐった先にあるのは【きぬかけの路】です。
金閣寺・仁和寺という世界遺産を結ぶこの道、途中にある龍安寺もまた世界遺産だというからまさに贅沢!
山を背負うこの道は自然が多く、桜や紅葉のシーズンには多くの観光客が訪れる絶景スポット。
昔ながらの町屋、みやげ物屋もあり、風情を感じさせてくれます。
そして見えてくる山門をくぐれば、さあ、もうすぐ静寂の世界です。
謎がいっぱいの石庭
龍安寺といえばこちらの写真ですが、ここに秘められた謎を知っていますか?
この石庭は正式名称を【方丈庭園】といい、幅25メートル、奥行き10メートルの敷地に敷いた白砂に模様をつけ、そこに大小15個の石を置いて水の流れと山を表しています。
15個の石は巧妙な配置になっていて、庭のどこから見ても一つ少ない14個。
一度に全ての石を見ることはできません。
東より5・2・3・2・3で配置された様子から【七・五・三の庭】、虎の親子が川を渡る様子に見えることから【虎の子渡しの庭】と呼ばれることもあるそうです。
作者は何を思って、どのようにこの庭をつくったのか、今となっては誰にもわかりません。
吾唯足知?
本堂の軒下にある蹲踞(つくばい)。
これは茶室に入る前に手を清めるため、水を張っておくものです。
水戸光圀が寄進したといわれるこの銭型の蹲踞、中央の窪みを【口】として共有したとき、上下左右にそれぞれ吾・足・知・唯という漢字になります。
これを並べ替えると【吾唯足知(われ ただ たるを しる)】=「私は満足することを知っている」。
意訳をするならば、欲に溺れなければ幸せと感じることができる、といったところでしょうか。
当時の人たちはここで修業して、この言葉の根底を理解しようとしたのかもしれませんね。
おしどりを愛でる鏡容池
境内の南側半分を占める大きな池、鏡容池(きょうようち)にもまた歴史があります。
先述の石庭が名声を得ている昨今ですが、龍安寺の周囲が徳大寺家の別荘として使われていた平安時代にはこちらの池が特に有名でした。
春には桜、夏にかけては睡蓮が咲き誇り、紅葉を経て冬には神秘的なモノトーンの世界へと移り変わります。
国の名勝にもなっているこの鏡容池、当時はおしどりの名所として貴族が船を浮かべて遊んだそうですが、現在は鴨や鷺が主に見られるようになりました。
池にはいくつかの島があるのですが、その一つである弁天島にはその名の通り弁財天の鳥居が立っています。
寺内には珍しいことですが、鏡容池には霊力があると豊臣秀吉が祀ったものだというからまた驚きです。
美に触れる、まだまだ癒しの境内
境内にはお土産コーナーもあり、定番の絵ハガキや和菓子から蹲踞を模したグッズなどが購入できます。
中でも、石庭をデザインしたシンプルな手ぬぐいは発売から根強い人気を誇るそうです。
現在、写経や座禅体験ができる寺院が増えていますが、なんと龍安寺では境内にある塔頭・西源院で精進料理をいただくことができます。
方々まで手入れのされた美しい庭園を眺めながらいただく熱々の湯豆腐は心まで温まる美味しさです。
いかがでしたでしょうか?
四季折々、日本の美しさを感じる優雅なひととき、あなたも満喫してみませんか。